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新岡淳のトラディショナル・コスチューム

雨降りと大雪、きもの コートと長靴。

最近、この国を見舞った大寒波、大雪を見て、ある光景が脳裏に浮かんできました。
それは、数年前の話で、北海道の旭川でマイナス21℃という日にきもので集まるパーティーをした時のこと。

雪の中、きものでおでかけ……。

その時「皆さん大変ですね。」と声をかけたところ、私たちはここで生活しているのですから と叱られました。
私は概ね暖かい地方で生まれ、暖かい土地で育ったため、実際にマイナス21℃などという気温は体験したことがなかったのです。地元の方々のお返事にはただただ頷くだけ。彼女たちが夏に九州に来られて、こんなに暑くて大変ですね と言われれば、私だって、いやそんなこと言われても、ここで生活しているから という返事になったことでしょう。
いや、実際、暑さは大変ですけれど……。特に私の体型は。

先日、大阪で『きもので落語を見に行く会』というのがあり、その前日にお越しになる皆さまに最終確認をしたところ、明日は雨なので行かないかも !というお返事の方が。
これには驚きました。

落語家さんと-大阪繁昌亭にて。

前述の旭川の時、マイナス21℃で雪が舞う中、100人あまりの参加者は、全員欠席することなく、会場のホテルに駅から歩いてこられていました。
それはきものの裾をからげ、長靴に(それもゴム長がほとんど)コートというかカッパを上に着て。私はそれを見て、生活をしているというのは、こういう事なのだ と愚にも付かない慰めの言葉を発した自分を責めたりしていました。
皆さん、ホテルに着くと1階のロビーで何事もなかったようにゴム長を脱ぎ、草履に履き替える訳ですが、そこはホテルもよく事情が分かっており、専用のゴム長置き場にずらりと並んだ黒い長靴。よそ者の私はどうやって自分のものと人のものを区別するのだろう と不思議さと同時に思わず優しい気持ちになるものです。

が、
大阪で雨だから行かない って。
「きものを普段に着て出かける」事が目的の会で、雨というのは普段にないことなのかしら? と思うのです。きものを着ることが普段の事でない と言ってしまえばそれまでなのでしょうけれど、そうであれば、きものを普段に着てという会に参加申し込みは筋違いですよね。

愚痴のになり恐縮ですが、結果は翌日が曇りで揉めることもなく、全員きもので落語を楽しんだ訳ですが……。
私としてはなにぶんにも納得のいかない話となってしまいました。

今の環境と比べるのもどうかと思いますが、ホンの60年前まで、この国では雨が降ろうが、雪が降ろうが、はたまた爆弾が降ろうが、皆さんきもの姿でいたのです。きものの上にもんぺがあったにしても。
それを今、雨が降るから と私より年上の方に言われますと、ちょっと辛いものがありますね。

雨や雪への対策は、昔から色々と工夫されてきました。それはもう生活の中でのきものですから当然です。
そんなものの中から、現代でも雨が楽しくなるものとして、お勧めなのは、きものへの撥水加工。水分が付いてもコロコロと水玉になって下に落ちてゆきます。元々は海軍の軍人さんが着る制服への加工のために開発されたものだそうです。
 

お天気がよくない時に、雨用草履カバー。
そして靴下型足袋カバー。


帯から上にかかった水分は帯のところで遮られ、下まで落ちていくことが出来ません。そこは大切な帯を守るため帯揚げに吸って貰う事で解決。
また写真の透明型草履カバーは、鼻緒を守るだけのタイプより全体を覆うものの方が、きもの屋としてお勧めです。更に足袋カバーという靴下型の草履の上に穿くものを足袋の上しておく(これを足袋の代わりにすると楽という意見もあり。NGですよ)こと、そして、換えの足袋。これだけ揃えておけば、後はちょっと和風な傘など差して「きもので雨を楽しむ」のも、ひとつの風情かと。

昔ながらの知恵に支えられ、備えがあって憂いを消し、雨や雪を愉しむ。
きものって楽しい! の1コマと思いませんか? やはり、日本人ですもの。

筆者プロフィール

新岡 淳(しんおか・あつし)

悦文カルチャーサービス代表

1956年 東京都立川市生まれ。
大学卒業後、商社勤務を経て、株式会社 吉田商店(現・日本和装ホ
ールディング株式会社)代表取締役。和装の入り口として、きものの着方を教えるスクールを主催するも、物足りなくなり2005年より、和装だけでなく伝統文化全体を対象とした悦文株式会社を創業し、代表取締役就任。社員のほとんどが女性、お客様は全て女性という男性が羨むような環境で働く中、その大変さを身を以て体験中!
家では妻、娘と女性だけの家族構成、8月に20年ぶりに飼ったチワワもなんと女の子。男は女のために働くが信条。日本きもの教育審議院院長。

(2010 年 2 月 2 日)

コメント / トラックバック 3 件

  1. gon より:

    こんにちは。まだまだ寒いですね。
    minaさんが「きものを着ることでできること」のコラムでコメントしていたアドレス見てみました。その中で「美がなくなってしまうと私たちの生活が生きたものにならなくなってしまう・・・」という言葉が印象に残っており、なんか日本人としての美の象徴でもあるきものを着ることで役割を担っているな~と自負してしまいました。

    なので、晴れだけでなく雨でも雪でも(確かに少しおっくうですが)着なくては!!
    私も草履カバーと雨ゴートを持っているのと、さらにきものに撥水加工をしているので、全く気にしていません。本当は毎日着れればいいのだけど、やっぱり少し特別な日に着るので、そんなの気にしていたらせっかくの気分が興ざめですもんね~。
    この靴下型足袋カバーは初めてみました。なかなかよさそうですね。

    旭川の方には申し訳ないけど、雪の日もきものでお出かけすると風情があっていいものですよ。

  2. 豊中 かおり より:

    こんばんは。いつも夜ばかりで申し訳ありません。私も住まいは南ですね。でも余程南で無いと、雪も降るし、地球上何処でも雨が降る事はありますもんね。この前、☆急デパートで、手作りの傘が特設フロアに出展しておりました。1H迷いましたが、私には予算オーバーだったので、我慢しました。ですがそれから、雨の日のお出かけが数回・・・。少し悲しくて、人の傘がステキに
    見えて、後悔・・・後悔・・・後悔・・・次であったら、出番がある事を言い訳に、頑張って買ってみようと思います。雨の日も、雪の日も、更にステキにお出かけしたいですもんね。

  3. aya より:

    こんにちは。ayaです。そうなのです。雨の日は着物を着ない。と言う方に良く出会います。でも傘をさしているといつも以上に周囲に気を配り、より所作が美しくみえると思うのです。雨の日が楽しみになるように、思い切り贅沢な傘を購入しました。とても大事に、そして着物の時にしか使いませんので、先代は12年以上使っています。また、雪の日は大雪は1,2回ですが、爪皮をつけた下駄でお出かけしました。周囲のこの雪の日に!と言う好奇の目も物ともせず、それはそれで楽しかったです。日曜日にデイト。もちろん着物でお出かけです。

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