「日本破綻」は、いつ起こる?
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申し訳ないことに、最近、コラムの更新が遅れ気味だ。理由のひとつは花粉症。アレルギー症状なのか、飲んでいる薬のせいか、頭がボーっとしてすぐに眠くなる。故に資料の読み込みが続かない。さらに先週から風邪をひき、8種類の薬を使っている。この季節、毎年思うが、本当にどうにかしてほしい。
さて、今週のテーマは「日本破綻」について。先の理由で取り上げるのが遅れてしまったが、3月7日の朝日新聞、「悪夢 20XX年日本破綻」という記事を読んだからだ。内容は、国債の引受先が決まらず、消費税は25%、国債は暴落、円安が一気に加速、株価は過去最大の下落、ハイパーインフレになって日本が破綻するという、近未来の憶測記事だ。トップ記事ではないが、注目度の高い日曜日の朝刊、1面である。なぜ、突然こんな記事が出るのか、私も強い違和感を持って記事を読んだ。
まず、朝日の記事を紹介しよう。いま審議中の2010年度予算は、歳出が92兆円、税収は37兆円。税収が歳出の半分にも満たない状況で、新たに44兆円分の国債を発行することになる。発行済みの国債は2009年末の時点ですでに700兆円、そこに44兆円の追加である。国債の残高ばかりを問題にしているが、実はそれ以外に、地方債など自治体の債務もある。それを入れると、2010年末時点の公的債務残高は、949兆円に積み上がる。これは、GDPの1.9倍になる。日本は借金もあるが、米国債などの資産もあるはずだという人もいるが、債務残高から資産を引いた純債務が、GDPの1.05倍。イタリアを超えて、先進国中最悪の数字だ。日本の国債は主に国内の金融機関が持っていて、それは一般家庭の預金や保険料などが支えている。その個人金融資産が1400兆円。IMFの試算では、2019年に公的債務が個人金融資産を上回り、借金を引き受けきれなくなるという。日本はあと10年もつかどうかの危機的状況にある。朝日はこの記事で、子供手当てや高校無償化などバラマキに走る民主党に、これでいいのかと警鐘を鳴らし、消費税増税を提言したということである。おそらくそこには、財政再建を目指す財務省の意向もあるに違いない。
あと10年というのが朝日の見立てだが、金融破綻はすぐそこまで来ているというのが、藤巻健史さんだ。藤巻さんは、元JPモルガン銀行の東京支店長で、「伝説のトレーダー」の異名を持つ金融の専門家である。やはりJPモルガンに勤務した経験のある経済評論家の佐藤治彦さんに伝え聞いた話だが、JPモルガン時代、長期運用を担当していたのが藤巻さん、短期運用を担当していたのがFXで有名な酒匂隆雄さんで、ともに当時のカリスマ・トレーダーだったという。実はふたりとも、私が日頃からウォッチしている金融アナリストであり、それぞれ円安派と円高派の論客として、真逆の主張を展開している。その藤巻さんが3月1日に「日本破綻」という本を出した。
藤巻さんの主張はこうだ。現在の日本の財政はかなりの危険水域にある。累積赤字もひどいが、もうお金を集めきれないのではないかという心配がある。国は、今後、2009年度に増額した9.3兆円、さらには来年度分である44兆円を、国債を発行して集めなければならないが、本当に国債を完売できるのか。一度でもお金が集まらない事態、つまり入札で未達が起こったら大事件になる。それは即、すべてのマーケットでの日本売りを誘発する。外国人はいま日本の財政を危険視しており、いったん財政懸念が表面化すれば、これまで日本の国債マーケットにかかわりのなかった外国人が大挙して参入してくる。もちろん、その場合、「買い」ではなく、「売り」で大量に入ってくる。そうなると、1997年のアジア通貨危機で韓国が経験したような、株安、債券安、通貨安というトリプル安が発生し、国債は大暴落、円の価値は2分の1以下、株も半値以下、という状況が起こりうる、というのだ。その後は、IMFがやって来て、韓国がたどったのと同じように、大幅円安になって経済も急回復するが、その過程で多くの企業や個人が、倒産、破産に追い込まれる。藤巻さんは、それを回避するには、緊急に円安政策を行い、同時に市場主義の徹底を目指せと主張している。藤巻さんに言わせれば、鳩山政権は行き過ぎた市場原理主義の見直しを言っているが、これは完全に間違っているそうだ。
今回の「日本破綻」報道、同じ財政再建論でも、朝日は結局のところ消費税、藤巻氏の主張は経済政策で乗り切れという主張で、まったく異なるものだ。経済問題は、常にいろんな議論があり、なにが正しいのかさっぱりわからない。先日、私も、「鳩山デフレの処方箋」というタイトルで、思い切った財政出動がなければ二番底は回避できないという主張を紹介したのだが、日本は二番底よりもっと大きな、破綻という危機に直面しているのかもしれない。おそらく、これをきっかけに、今後、財政再建の議論が盛り上がっていくことになるだろう。その時は、消費税問題に終始するのではなく、ぜひ実効性のある政策論を戦わせてほしいと思う。
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筆者プロフィール 高木 幹太(たかぎ・みきたか)
雑誌『ダカーポ』最後の編集長。『ダカーポ』時代からの癖で、いまだに新聞各紙、週刊誌全誌に目を通す毎日。日々のメディア・チェックを通して、「ダカーポ的 時評」を執筆中。個人的なテーマは、ヨーロッパ放浪とワイン。ワイン好きが高じて、イタリアのワイナリー100軒余りを取材した。著書に『イタリア銘醸ワイン案内』。日々飲むワインは、フリウリ州のソーヴィニヨンとロッソ・ディ・モンタルチーノ。そして、時々、10年熟成のバローロ。 |
(2010 年 3 月 18 日)


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