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シネマ

いつか報われる(かもしれない)日のために今日できること。映画『フィッシュストーリー』

 

ストーリーは……

2012年、地球は大ピンチを迎えている。彗星の地球衝突まで残り5時間なのだ。そんな中、中古レコード店から、ある曲が聞こえてくる。その曲は『FISH STORY』。1975年、早すぎたパンクバンド『逆鱗(ゲキリン)』が最後のレコーディングで演奏したものだった。

ところ変わって1982年、気弱な大学生は「いつか世界を救う」と予言される。

そして2009年、女子高生は修学旅行で乗っていたフェリーがシージャックに巻き込まれ、「正義の味方になりたかった」フェリーのコックと出会う……。

まったく関係性をもたないような登場人物たちが、時空を超えてどのように「つながる」のか!? 
『アヒルと鴨のコインロッカー』のチームが贈る、伊坂幸太郎ワールド第2弾!
 

 

 

このセリフがよいのです。

僕の孤独が魚だったら
巨大さと獰猛さに 鯨でさえ逃げ出す
きっとそうだ きっとそうだ

by 逆鱗 『FISH STORY』の歌詞冒頭



 
1975年、売れないパンクバンド『逆鱗』の歌った『FISH STORY』という曲の間奏部分は、なぜ突然、音が一分間出なくなるのか!? 制作側の意図? それとも何かの事故??

不自然なその1分間の無音に込められた「誰かの想い」。これこそが、この映画の重要なキーワード。

その空白部分に女の悲鳴が聞こえる、という噂が飛び交い、実際それを聞いてしまった気弱な大学生が取った行動により、思いがけない方向に物語が展開していく。

『フィッシュストーリー』のこの一見哲学的な歌詞と沈黙に込められた本当のメッセージとは一体何なのか……。

ネタばれになってしまうので、あまり詳しくは書けないが、その沈黙に封じ込められた「想い」の成分が、言葉の意味すら超えて別次元に作用した結果、めぐりめぐって世界を救うなんてこともあるかもしれない、というお話。

映画の後半、それまで独立して展開していた各時代のホラーやアクションやSFの要素満載のエピソードが突如としてつながり始め、もとはと言えば「勘違い」や「思い込み」に端を発する小さなお話が、いつのまにやら壮大な計画に多大なる影響を与えていたのが一気にわかり、あっけにとられる。

そういえば、この映画のタイトル『フィッシュストーリー』とは、「ホラ話」のことではないか。魚のお話とは無関係、壮大な、壮大なホラ話なのだ。

でもこの映画には、どこかの誰かが見ず知らずの誰かに伝えようとしたことは、時空を超えていつか予想だにしない形で成し遂げられたりすることもあるのかも……と思わせてしまう不思議な強さが備わっている。それらがたとえどんなに荒唐無稽であったとしても。

『逆鱗』のボーカル役 五郎を演じる、高良健吾がいい。
細身の衣服に身を包み、ステージに佇む姿が様になる。強気なのに、ふとした瞬間に垣間見せる不安そうなまなざしや、とぼけた受け答えの妙。これはもともと彼が持つ魅力でもあるのかもしれない。

映像化不可能と言われた『アヒルと鴨のコインロッカー』を見事な手腕で映画化し、原作者である伊坂幸太郎をも唸らせたチームが、音楽プロデューサーに斉藤和義を迎え、再びタッグを組んだこの映画。面白くならないわけがない。斉藤和義による曲、『フィッシュストーリー』も心に残る。

世界の終焉はそんなに簡単には訪れない。
今のところ、こんな時代を生き延びるには、地道にいつか報われるかもしれない日を信じ、『逆鱗』の歌を聴きながら、時にホラーやアクションやSFの要素満載の日常に「正義の味方」が現われるのを待つしかなさそう。

『フィッシュストーリー』
3月20日(金)よりシネクイント、シネ・リーブル池袋ほかにて全国ロードショー!

監督:中村義洋
原作:伊坂幸太郎
音楽プロデュース:斉藤和義
出演:伊藤淳史、高良健吾、多部未華子、濱田 岳、森山未来、大森南朋
配給:ショウゲート 宣伝:ミラクルヴォイス
上映時間:112分
2009年/日本/ カラー/ビスタ/DTS
©2009「フィッシュストーリー」製作委員会

 

筆者プロフィール

渡邊 玲子(わたなべ・れいこ)

元映画配給会社勤務(主に宣伝と字幕制作を担当)

白金台の一軒家での7人暮らしを経て、現在は郊外の実家に居候中。
最近はもっぱら早寝早起き。アートと本と音楽にまみれた日々を過ごす。趣味は書道とカメラ。
思いがけないところで人脈がつながることが多く、広い世の中の狭さ加減に改めて驚く今日この頃。

(2009 年 3 月 20 日)

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